上総の田舎の面影に漂いながら、おいしい昼下がりの時を過ごす愉しみ〜市原市「cafe のっぽ141」【追補版】

 

国道から路地へ、

路地からカフェの庭へ、

そして静謐な空間が待っている。

場の展開が、

カフェの感性と向き合うアンテナの感度を高めてくれる

 

「cafe のっぽ141」

市原市郡本4-141

上総国分寺の骨董市をくまなく見ていたら、もう午後一時を過ぎています。

そろそろお昼を戴くことに致しましょう。

 

車の往来の激しい国道297号線の郡本交差点辺りから狭い路地に入ると、住宅街の合間に小さな畑が混在し、上総の田園の面影を微かに漂う・・・国道の喧噪が幻だったかのようです。小さな看板に導かれながら辿り着いたのが、屋敷林に抱かれるように佇む、築50年余りになる木造民家。緑の木々に碧く重なる瓦が鮮やかに映えます。

 

「cafe のっぽ141」と描かれた木札を横目に、ゆっくりと引き戸を開けて中に入ると、これまで野良の雰囲気だったのが、一気に静謐な気配漂う空間に変わります。珪藻土で塗られた壁に、白く彩られた柱や梁。雑念の及ばない、白く、凛とした空間。小学校で使われていた机に雑誌が置かれ、屋敷林に面したガラス窓を覗けば、さり気なく配されたオブジェが。空間にリズムを程よく与えてくれます。カフェを切り盛りするご夫妻の感性が、いろいろなところから私の身体へ入り込んでいくのです。

・・・・・そう、光が木の葉を透過していくかのように。

 

実はこの空間、カフェを切り盛りするご夫妻自ら改修を手がけました。

 

「上によじ上って、上を見上げながらペンキ塗りして」

 

と笑う奥様。

それを訊いてつい、私はミケランジェロの天井画製作の場面をイメージしてしまいました。開放感溢れる高い天井ですが、2階は元々なく、天井を取ったら今のような広がりになったそうです。

キーマカレーとも迷いましたが、この日の食事はランチセットに。玄米ご飯か天然酵母パンかを選ぶことが出来ますが、この日はパンにしてみました。奥様はホシノ酵母と自家製酵母を使った天然酵母パンを自ら手がけ、テイクアウト用に販売もされています。その奥様お手製のパンと、一緒にプレートを飾る牛蒡のスープとの相性が抜群です。有機無農薬栽培の人参を天婦羅にしたものは

 

「味付けをしていないので薄いと思われたらお塩をどうぞ」

 

とのことですが、そのままでも充分な、甘やかな香りを湛えていました。

 

今日のランチセットの華はグラタンです。当初、野菜にミートボールも加わる予定だったそうですが、肉を使い切ってしまったため、白身魚をミートボール風にしたものをグラタンの中に閉じ込めました。しつこさのないチーズの香ばしいコクが、野菜の弾けるような風味と溶け合います。ちょっぴり贅沢な気持ちにさせてくれた、冬野菜のグラタンです。

 

帰り際、ご夫妻と話が盛り上がりました。元々奥様は服飾関係のお仕事をされていたようですが、環境のいいところでカフェをやりたいと、物件を探し、今の場所に辿り着いたそうです。これまで蓄積されていた感性、モノ、コトを愉しむ気持ちが、この空間で花開いている。奥様の微笑みは、そう感じさせるものでした。

 

今日は奥様手づくりのパンをお持ち帰り。そのパンを並べている調度品が素敵で、いつの年代のものですか?と尋ねると、なんとご主人がDIYで創作されてもの。料理に日曜大工にと、ご主人も思い切りここでの暮らしを愉しまれているよう。愉しそうなご夫妻のあり方が、カフェの空気感と繋がっているのです。

 

[Posted On 2014.3.6]

7月、改めてcafeのっぽさんを訪問しました。

梅雨明け後のうだるような暑さですが、木立に囲まれた空間は、どこか涼やかな雰囲気が漂っています。

 

この日はランチセットのAをオーダー。

メインはマグロとレンコンのハンバーグ。レンコンのシャキシャキとした食感とともに、うま味がジュッと広がります。ニンジン、タマネギ、セロリ、ジャガイモなどを使った冷製スープは、すぅっと身体に沁み入るよう。窓の外の木々を眺めながら味わう料理は格別です。


食後、自家製ジンジャーエールを戴きながら、奥様とカフェ談義に花を咲かせます。那須のSHOZOや奈良のくるみの木のように、その地域の文化として、どうカフェがあるべきなのか。そして千葉の長生村を中心とする九十九里から一宮にかけての可能性・・・楽しいお話がいっぱい伺うことができ、久しぶりにゆったりとした時間を過ごすことができました。

 

[Posted On 2014.7.26]