【いっぴんさん】「場を通じて、商品を通じて、想いを伝え、繋がっていきたい」〜千葉市緑区「Community Cafe ♭(ふらっと)」でプリンセスぷりんの優しい余韻に浸る

 

「Community Cafe ♭」

千葉市緑区おゆみ野6-27-4

おゆみ野プラザB棟

千葉市の中心部から県道20号、大網街道を東へ。畑や林の緑が濃くなり始めた頃、おゆみ野の住宅街の中に迷い込みます。その一角にあるのが「Community Cafe ♭(ふらっと)」。千葉県のタウン情報誌『月刊ぐるっと千葉』5月号「いっぴんさん」の取材で訪問させていただきました。

 

明るいウッドデッキのエントランスの脇には無農薬野菜の小さな畑。期待を抱きながら扉をあけると、ちょうどランチ時とあってか、女性客を中心に賑わいをみせています。ユニークなのは、絵本やおもちゃなどでちびっ子たちが自由に遊ぶことができる、カウンター脇の小上がり。このようなスペースがさりげなく設けられているので、ママさんも落ち着いて食事を堪能することができるのです。

 

この日はたまたま「ワンデイシェフ」の日でした。

ワンデイシェフとは、日ごとにシェフが入れ替わる食提供システムで、地元の人材を積極的に活用できます。例えば、「得意のイタリアンを通じて、いろいろな方とコミュニケーションを取りたい」というケースもあれば、「将来お店を開きたいけど、今すぐにはちょっと」という、将来の飲食店店主の卵たちの孵卵器としての役割も期待できます。千葉県ではぐる千葉時代によくお世話になった大網白里市の不動産会社「大里綜合管理」さんの「コミュニティダイニングおおさと」がよく知られています。勝浦でも潜在的な人材が結構いらっしゃるので、市野川の古民家でこのようなお店をやってみるのも面白いかもしれませんね。

 

こうして料理を食べに来たお客さんも、料理を振る舞う地元の方も入り交じりながらお店の賑わいが醸し出されています。その活気ある風景のなかに、当たり前のように障がいのある方たちも働いています。実はこちら、地域の方たちと障がいのある方たちの架け橋になりたいと、「特定非営利活動法人はぁもにぃ」によって開設された、カフェショップなのです。


今回の取材のメインは、障がいのある子どもたちによって一つひとつ手作りされた「プリンセスぷりん」。「食のちばの逸品を発掘2014」で銀賞を受賞したスゴ腕のプリンなのですが、指導員の加藤さんが「優しい味」と強調される理由に思わず納得してしまうおいしいプリンです。これに、「からすざんしょう」のハニーシロップをかけると、驚くべき美味しさの二段活用が展開されちゃうのです・・・・・が、詳細はぜひ発売中の『ぐるっと千葉』5月号をご覧下さいませ。

 

この日、「はぁもにぃ」理事長の長浜さんにお話を伺うことができました。

 

「優劣ではなく、ただ違うだけ」

 

という長浜さん。

実際プリンの製造現場を拝見させていただきましたが、障がいがあるから雑になるとかということはまったくなく、むしろ手を抜くことのない実に丁寧な仕事ぶりです。ただ、プリン液の流し入れの作業がうまくできないなど、個々人によって不得意な作業もあります。そのようなところは無理をせず、自分のできる形を考え出して、一つの仕事というあり方を構築します。仕事を細分化したうえで、この子だったら何が得意でこの作業ができるかを考える。人に向き合う姿勢そのものが、はぁもにぃの仕事のあり方なのです。


プリン以外にも千葉県産素材を活用したスイーツを次々と開発
プリン以外にも千葉県産素材を活用したスイーツを次々と開発

さらに、長浜さんは

 

「発達・知的障がいは目に見えません」

 

そして、

 

「発達・知的障がいは圧倒的に軽度の人が多い」

 

と言います。

発達・知的障がいの約85%が軽度。これだけ訊くと、軽いならば重いよりもいいのでは、と考えてしまいがちですが、問題なのは

 

「在宅がほとんど」

 

という現状にあります。

 

「(外に・社会に)出たくないわけじゃないのですが、

 社会にまだまだ受け皿がない」

 

また、軽度がゆえに制度的な保障も手薄く、障害者手帳はもらえても、障害者年金はもらえなかったりするなど、まだまだ公的支援が必要なところであるのです。

 

はぁもにぃの利用者の中には、当初、一般企業で働いていた人も多いそうです。ですが、ほとんどが人間関係による理由で退職を余儀なくされています。職場に余裕がなく、居づらくなるのが現状なのです。だからこそ、ソーシャルファーム(※)が求められています。

 

※障がい者や労働市場で不利な立場にある人の安定的な雇用と賃金を確保する、という社会的な目的を持って活動している企業や組織。作業所のような「福祉的雇用」と「一般雇用」の中間に位置する、いわば「第三の雇用」

 

「こちらから手を伸ばすことで、

 みんなの『知らない』をなくすことが可能です」

 

と、「伝える」ことの大切さを語る長浜さん。

商品企画、原料探し、ラベルデザインに至るまで、利用者のみなさんと関わりながら作り上げたのが「プリンセスぷりん」です。障がいがある子が作ったから買って、ではなく、確かな商品力とそこに込められた想いがあるプリンは、手法としてのブランドづくりとは一線を画しています。だからこそ、プリンセスぷりんは「伝わる」のです。

 

「場を通じて、商品を通じて、

 想いを伝え、繋がっていきたいと思います」

 

その、想いを形にしたプリン、そしてカフェ。

 

「半径20キロ圏内のノーマライゼーション」

 

を築く挑戦は、まだまだ続きます。