現代の経済ロジックの歪みに一筋の光を射す新たなスタンダードを、勝浦市の奥地から〜「高旨農園」のキウイフルーツに弾ける笑顔。都市と農村はもっと人間味に満ちた繋がりを持てる

里山のキウイ畑の迷宮で、おいしい宝探しを

今日は天気予報とは裏腹に、文字通りのうららかな小春日和に。この日は地元、勝浦市市野川地区でキウイやシイタケの栽培、天日干しのお米づくりを行っている「高旨農園」さんを訪ねました。高旨農園の園主である高旨達郎さんは、地域おこし協力隊の仕事として以前、取材をさせていただきました。中山間地である市野川において、身の丈にあったスケール感で暮らしと生業を紡ぎ、次代へと継承されています。


■高旨農園取材記事『広報かつうら』かつうらしいひと

http://www.city.katsuura.lg.jp/div/teijyu/pdf/teijuusokusin/katsuurashii17.pdf

 

 

この日は高旨農園にとって、年に一度のビッグイベント、キウイフルーツ狩り体験の日。私もお誘いいただき、自宅の古民家にいさんちからチャリに跨がって颯爽と・・・といけばいいのですが、日頃の運動不足でゼーゼー言いながら農園に到着です。


現地に着くやいなや、来園者の多さにびっくり。

子ども連れからばあちゃんグループ、「アクアラインを越えて来たの」という県外グループに至るまで、さまざまな人たちが袋にめいっぱい詰め込んだキウイを、うんしょうんしょと運んでいます。

私が受付で詰め放題用の袋を受け取った時の通し番号が670だったので、恐らく最終的にはちびっ子たちも含めて1000人くらいの人たちが勝浦市の奥座敷のような里山に集って来たことになります。いやぁ、これはすごい!


野菜のほか、餅、ジャム、芋羊羹、シイタケ、そして豚汁の販売も。市野川にある障がい者グループホーム「じんべい」のみなさんもふかし芋の販売で参戦です。みんなで愉しい里山の一日を作り上げます。


さっそくキウイフルーツ畑の中に潜り込みます。いやぁ、この畑の中に迷い込むだけでもなんだかわくわくしてきちゃいます。子どもたちも大はしゃぎですね。


達郎さんの息子さん、昌史さんからはキウイフルーツの保存方法などのアドバイスもいただきました。もいだばかりのキウイはまだ固く、追熟させる必要があります。早く食べたい時はリンゴとともに置いておきます。リンゴのエチレンガスの作用で、熟すのが早くなります。逆に長期間保存したい時は、袋や段ボール等で「密閉させない」状態でおいておく。そうすると翌年の春頃まで持つのだそうです。


もぎとり後、勝浦の街中にあるビストロ「おーぼんあくぃゆ」さんでよくお会いする高梨さんや、椎名さんに遭遇。な、なんと勝浦自慢の豚肉「房総なるかポーク」のBBQにお誘いいただいてしまいます。


■房総なるかポーク

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「あれ、野菜ないじゃん」となりつつも、「うちの畑から満願寺唐辛子持って来よう」と昌史さん。近くの畑からまさに採りたての野菜がBBQに加わります。そして「なるかポーク」のソーセージ!なんという贅沢!!
「あれ、野菜ないじゃん」となりつつも、「うちの畑から満願寺唐辛子持って来よう」と昌史さん。近くの畑からまさに採りたての野菜がBBQに加わります。そして「なるかポーク」のソーセージ!なんという贅沢!!
とんとろのこのサシの入り方。美しい・・・
とんとろのこのサシの入り方。美しい・・・

高旨農園のシイタケは肉厚で香り高い!もはやキノコのステーキです
高旨農園のシイタケは肉厚で香り高い!もはやキノコのステーキです
燃えやすい竹を巧みに使う竃の番人、昌史さん
燃えやすい竹を巧みに使う竃の番人、昌史さん

これがもう、お肉はこんなに多彩な味わいなのかという、仰天の旨さ!脂がトロリと広がるのもあれば、ギュ、ギュっと肉のうま味が染み出すものも。個人的にはベーコンがお気に入りで、こりゃパンにチーズとともにサンドしたらさぞかしおいしいだろうなと妄想。


そしたら隣町、御宿台で毎月第2・第4土曜に開催される「御宿台朝市」に、なるかポークの椎名畜産さんのほか、いすみのチーズ工房「IKAGAWA」さん、パン屋さんが出店。昌史さんもシイタケや野菜の販売をされており、この御宿台朝市をクルッと廻れば、極上サンドができちゃうという魅惑の顔ぶれなんだそう。繋がりあう美味しさ・・・これは一度行かねば(笑)。


この日はいただきっぱなしで本当に恐縮しきり。本当においしさ弾けるランチタイムでした。本当にありがとうございます!


それにしてもこの高旨農園のキウイ狩り。

昌史さんかぼそっと、


「袋にパンパンに詰めて7、8キロくらいかな。

 それがこれだけの人だからね」


とおっしゃっていたが、この収穫作業をひと家族でやろうとしたらとてつもなく大変なことだ。それが、こうして大勢の笑顔に変わっている。


「あるものを活かす方がいい。

 欠点をいい方に持っていく方がいい」


そう語る、達郎さんの言葉が思い返されます。


この日、その「光景」が本当に素晴らしかった。

キウイ畑で笑顔を弾けさせる子どもたち。

収穫の終わった田んぼでBBQを楽しむ大人たち。

畦にある竹で遊び、BBQに使う炭にわくわくする、おばちゃんの作ってくれた豚汁すすってほっと一息つく。この里山全体に、心が躍り、そして安らぐ。

約20年も前に始めたキウイのもぎとり体験。

取材時に達郎さんはこう言いました、


「こういう観光農園とかおだ掛け米の宅配って、

 隙間産業なのかな。

 でも、この隙間を広げていかなきゃならない。

 そのために必要なのがお客さんとの信頼関係なんですよ」


信頼関係とは、

単純な市場出荷だけで結ばれる物質的な繋がりでは生み出されない、

「人間味に満ちた繋がり」。

それは、

右肩上がり的な経済ロジックの歪みに光を射す、

「新たなスタンダード」。

きっと、出版の世界も、どの世界でもそうなんだろうと、思わずにはいられませんでした。