【いっぴんさん】仲間たちとともに、九十九里をもっと面白く〜HAPPY NUTS DAYの「PEANUT BUTTER」

『月刊ぐるっと千葉』12月号のいっぴんさんは、九十九里町の「HAPPY NUTS DAY」を訪ねました

HAPPY NUTS DAY

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本文中に登場するお気に入りのパン屋さん。

ご察しの通り「naya」さんです。

パンを拵えてピーナッツバターを求めて海辺のまち、九十九里町へ。

なんと贅沢な房総ドライブでしょう

・・・・・違った。取材、お仕事です(笑)


カタクチイワシや、その加工品「イワシのゴマ漬け」で知られる九十九里町は、サーフィンのメッカとしてもその存在感を持つ町。しかしながら、波乗り道路からちょっと内陸に眼を向ければ、どこまでも続く伸びやかな平野が広がり、散居村然とした、この地域ならではの風景が展開されます。


その田園の一角を耕作されているのが「HAPPY NUTS DAY」。実は今、巷でHNDのこの「PEANUT BUTTER」がブレイクしているのです。

今回、代表の村井駿介さんを取材させていただきました。ちょうど取材当日は仲間たちと行う落花生の収穫作業の日。神戸や大阪からも友人が駆けつけてくれました。その愉快な作業の様子は本誌をぜひご覧下さい。個人的に印象的だったのは、収穫した落花生を積み上げた「ぼっち」を作らないこと。八街の秋の風物詩にもなっている落花生のぼっちですが、こちらのように、畦に置いて乾燥させる方法もあるのだと、教えて頂きました。


村井さんの実家は九十九里町の農家。高校生の頃から、いつかは農業を、と考えていたそうです。その頃、大規模農業について書いた新聞が目につきはじめ、大学生の時に三年間、デンマークに留学。現地の大規模農業の現場に触れました。その時、


「規模感が違うな。

 これ、日本でやる人がいるんだろうか」


という感覚を抱いたといいます。

また、留学中、スケボーをやって怪我をしてしまうのですが、


「デンマークって、留学生は治療費がタダだったんです。

 もう、福祉も違うなって。

 そういうことも感じたんです」


様々な疑問を抱きつつ、大学へ戻りました。


在学中には、先輩からの誘いで表参道のマルシェに出店。父親の野菜などを販売するようになります。ただ、そこで感じたのが


「加工品の方が売れるな」


ということ。そんな折、トマト加工、トマトペーストソースを作らないか、という話が持ち上がります。が、時は落花生の収穫シーズン。そこでトマトではなく、落花生の加工という道を選んだのです。


ピーナッツバターづくりに、当初はすり鉢で擂るところから、まさにゼロからの開始。試行錯誤の連続でした。会社の設立に関しても、


「社会人未経験で、

 そもそも名刺って、どう渡すの?

 って感じで(笑)」


そんな状態でしたが、スケボー仲間のメンバーたちが手を差し伸べてくれたことが大きかったと、村井さんは振り返ります。


ピーナッツバターが知れわたってくるようになってからも、紆余曲折が続きます。展示会で販売したさい、注文の多さに工場のラインがついていけず、機械が壊れたこともありました(ピーナッツバターは粘度が高く、加工が難しいそうです)。現在は1時間で20個作るのが限界。新たな工場の生産ラインを模索しているといいます。


落花生の焙煎については


「10秒の焙煎時間で風味が変わる」


と、焙煎の「色見本」まで用意する徹底ぶりです。これには驚きました。いや、HNDのピーナッツバター、その味わいの特徴はなんといっても「香り高さ」なんです。その味わいは本誌で、そしてみなさんの舌で味わってみて下さいね。

原料に使用している「塩」。実はコレ、以前「いっぴんさん」でご紹介させていただいた、SUNRISEの「あげ浜塩田製法塩」(旭市)です
原料に使用している「塩」。実はコレ、以前「いっぴんさん」でご紹介させていただいた、SUNRISEの「あげ浜塩田製法塩」(旭市)です

「九十九里ってサーフスポットじゃないですか。

 でも町としてのホスピタリティが弱いなって思うんです。

 遊んで、九十九里良かったねと言われるような町にしたいですよね。

 ここって、天然ガスやヨードも取れるじゃないですか。 

 天然ガス掘って温泉ができるようになるんじゃないかな。

 ヨードの温泉。

 井戸水にも成分が含まれているらしいですし。

 温泉、できるといいな。

 町を盛り上げていきたいんですよね。

 若い人たちみんな都心部でちゃうんで。

 地元でもできるし、

 こういう農業でもできるんだってことを伝えていきたいですね」


地域の未来を語る村井さんは、本当に熱いです。

さらに、活動のひとつの軸になるピーナッツバターは、


「外国では日本以上に一般的なんです」


と、世界に通用する「存在感」をも見据えています。それは、学生の時抱いた疑問と、足元の地域の現状が、底流にあるのかもしれません。


「ピーナッツバターの仕事をしてて朝になっちゃって、

 そのままのノリで朝日浴びてこうって、

 サーフィンに行ったりとか」


ここで暮らし、生業を築いていくことの可能性、そして、愉しさ。

村井さんとその仲間たちの笑顔をみていると、胸の中にあるもやっとした澱みが消えてゆくのが分かりました。