西日本一周の旅[1]京都から山口へ

一昨年、昨年に続いて今年も車中泊しながらの西日本一周の旅へ。前回以上に本屋さんからの口コミで旅程が組み上がっていく面白い展開でした(※Facebookに掲載したものをそのまままとめたものです)

「西日本一周の旅…点景 2018.5.11」

 

レティシア書房(京都市)

Cafe Bibliotic Hello!(京都市)

blackbird books(大阪府豊中市)

1003(神戸市)

ぎょうざ 大学(神戸市)

 

今年も西を巡ります。

一昨年、昨年に続いて3回目です。

 

初日は三都を駆け足で、お付き合いいただいているレティシアさん、ブラックバードさん、1003(せんさん)各店へ。ピーナツハニーを手土産に。みなさん例外なく「コレどうやって食べるの!?」と未知との遭遇に笑いが吹き出しておりました。味噌ピーナッツの小袋でこんなに話が広がるとは面白いです(笑)。一方でピーナッツ最中の存在はみなさんご存知で、これは意外でした。各店で『房総落花生』のお取り扱い始まりました。どうもありがとうございます。

 

「その土地その土地の食を取り上げるのは面白いよね」と、レティシアの小西さん。栃木県のイチゴのリトルプレスなど、各地のユニークな本を教えていただきました。そんな小西さん、「本は生きてるからね。うまく(別の棚に)動かしてやると、お客さんの見たときの印象が変わるんや」と、「本は生き物」ということを力説されてました。本をどう送り届けるか、考える上でなるほどなと思わされます。

 

ブラックバードさんでは大阪なのになぜか『房総コーヒー』が完売しいて追加納品。有り難いことです。大阪のみなさま、ぜひ房総へコーヒー旅へいらしてくださいね。

 

1003ではなんと『月間ドライブイン』の著者の方が拙著をお買い求めくださったとのこと。私と同じくリトルプレスを手がけている方に手にとっていただけるとは、妙に嬉しい気分です。南房総の和田にある「なぎさドライブイン」の記事、拝読させていただきましたよ

「西日本一周の旅…点景 2018.5.12」

 

室津(兵庫県たつの市御津町)

問屋町エリア(岡山市)
 →cafe.the market mai mai
 →くらしのギャラリー本店

手打ちうどん さぬきや(岡山市)

451BOOKS(岡山県玉野市)

三村珈琲店(岡山県井原市)

 

・室津の街並み

入江に山が迫り、肩を寄せあうように家々が並ぶ。鼠色の瓦屋根の重なりの合間から誰かがくしゃみした声が・・・暮らしの距離が近い。洗濯物を干しているおばちゃんと、小さな平地に植わった玉葱。牡蠣の養殖棚広がる穏やかな表情の海へ、一隻の漁船が出航していく。地形と自然環境と海の暮らしが折り重なる風景。気を衒わない素直な風景、美しい

 

・くらしのギャラリー

持ったときの掌にふっと収まる感覚に惹かれて、「野はら屋」(薩摩川内市)佐々木かおりさんの器を買い求める。そして、い草で作った「須浪亨商店」(倉敷市)のボトルを入れる籠も。ほどよく伸び縮みしてくれて、ちょっと太めの瓶も収納できそう。

「岡山は、かつてはい草の一大産地だったんです。干拓したところだから塩があって作物を育てにくい。でもい草は塩が必要な作物なんですよ。だから倉敷緞通も生まれたんです。畳表に使うい草は長さが必要で、長さの足りないものは使えない。だから短いい草はこういう籠に活用したんです。こういうモノがここにあるっていうのはね、ちゃんと理由があるんですよ」

「この籠を作ってるのはまだ25歳くらいの職人なんです。おばあちゃんが籠を作ってたんだけど、辞めるっていうことになって、じゃあ自分がやると。家族は反対したそうなんですけど、借金だけはしないということで跡を継いだそうです」

くらしギャラリーの店主の方が、その背景を教えてくれたのですが、感動してしまった。それには、そこにある理由がある。なんだか室津の風景の美しさとも通じるような気がしました

 

・cafe.the market mai mai

以前、451BOOKSで購入した岡山のカフェを紹介したリトルプレス『nanの岡山カフェ案内』『nanとカフェの12ヵ月』に掲載されているのを見ての訪問。ビルを改修したカフェ空間には様々な人たちが思い思いにやってきて、あるべきお客像を規定しない自由な感覚がいい。

地元ではここ問屋町界隈はアツいスポットらしく、ランチ時には車の止め場にも困るほどの賑わいよう

 

・手打ちうどん さぬきや

「本当のおすすめは鍋焼きうどんだったんですよ~」、うどんがきた後に店員さん(笑)でも、豚肉うどんも美味でした(写真は1.5玉)。ダシもおいしい。創業して50年くらいらしい。佇まいに惹かれて思わずUターンした甲斐あり

 

・451BOOKS

いつもお世話になっている、児島湖畔の本屋さん。たまたま松山からいらした若草幼稚園のRさんも来店されていて、店主の根木さんご夫妻とともに、落花生の話や何故か公共交通や鉄道の話に発展して・・・本を読む以上に喋っていた気がします。本当に楽しい時間であっという間。今後、新たに面白い展開があるかも!?

ちなみに写真の超ビッグな絵本はいわいとしおさんの「100かいだてのいえ」。100建感がひしひし伝わってきます(笑)読み聞かせや贈り物に人気があるそうです。有り難いことに『房総落花生』の販売も始まりました。岡山のみなさま、千葉県のディープな落花生カルチャーをぜひご堪能くださいませ

 

・三村珈琲店

1kmほど手前で野生のミミズクとご対面。このあとなにかいいことあるかも!?

「西日本一周の旅…点景 2018.5.13」

 

原爆ドーム(広島市)

READAN DEAT(広島市)

ビタミンyou(広島市)

津和野街道
 →向峠(山口・島根県境辺り)
 →道の駅むいかいち温泉(島根県)

 

・原爆ドーム・リーダンディート

『戦災を未然に防ごうとする学問にとり組む学者、戦災を本気に憂える人たちは、いつも白い眼で見られるようになる。私たちはそのことをかどばってここにとやかくいうのではない。ただいう、「この本」を見よ。』

原爆ドームからほど近く、レトロなビルの2Fにある「リーダンディート」で思わず手にした『廣島 -戰爭と都市-』(岩波写眞文庫72・復刻版)。上記の文面は冒頭近くに書かれていたメッセージです。原文は1952年発行当時のものですが、この警告は現在においても色褪せません。例えば、ああ言えば「国を愚弄するのか」と叩かれるような、言論の不自由さ。ネット社会と分断社会で、どう自由と多様性を甦らし、また守り、伝えていくのか。私を含め、平和を望む市民みんなの課題だと思います。

本や器、雑貨などを販売しているリーダンディート。残念ながら店主の方はイベントのためにご不在でしたが。代わりに奥様とお話することができました。

「思い入れあって作られた本を置いているの。本って、いろいろな人たちと繋がれるじゃないですか。それがすごくいいなぁって思うんです。こうやって本を持ってきてくれたり、遠くから来てくれる人もいるし、お店でコーヒー豆を並べてみたり。近くにおすすめのコーヒー屋さんがあるんですよ。こうやって(店内を)見ているといろいろな方たち顔が浮かんでくるんです」

私も、顔の見える商いをやっていきたい。心通じ合う感覚を味わってしまったら、やっぱり本づくりはやめられないですよ。

 

・ビタミンyou

リーダンディートの奥様に教えていただいたお好み焼きのお店。あらゆるところに感動しきりの素晴らしいお店でした。気骨あふれる職人の店。麺、具、卵がざっくりと3層になっているのですが、それぞれの焼き加減、食感の絶妙なバランスは今まで味わったことがないもの。ただ混ぜて焼けばいいってもんじゃないんですね。

たまたま背後のテレビでNHKの『プロフェッショナル』が流れてて、常連さんが「おじちゃんプロフェッショナルに出れるよ。お好み焼き職人で」と笑うと、スガシカオのテーマソングが流れてきて、店主のおじちゃんが神がかって見えてきた(笑)

ここ以外にも奥様からはいっぱいオススメのお店を教えていただいたので、これはまた訪ねるきっかけになりそう。これこそ旅の醍醐味です

 

・山陰へ

日本海側を目指していくつも峠越え。田植えが終わり、水を張った田んぼ。水面に映える、赤褐色の石州瓦が美しい。色で、山陰の近さを知る。萩市に入り、今年初めてカジカガエルの声を訊いた。澄み渡る音色を反芻しながら眠りにつきたい。

「西日本一周の旅…点景 2018.5.14」

 

JR山陰本線・三見駅(山口県萩市)

通漁港(山口県長門市・青海島)

金子みすゞ記念館(長門市・仙崎地区)

道の駅センザキッチン(長門市・仙崎地区)
 →千石寿司

俵山温泉・町の湯(長門市・俵山地区)

ロバの本屋(長門市・俵山地区)

ぽんぽこの里(山口県美祢市)
 →ぽんぽこの里直売所
 →sonoda coffee

 

・通漁港

『こんなに青い、青ぞらが、

/わたしの翅に触るのは、

/どんなに、どんなに、いい気持。』

(「井戸ばたで」より)

仙崎出身で大正時代に活躍した童謡詩人、金子みすゞの言葉が、澄みわたる空と、凪いだ海原に重なります。ここは、かつて捕鯨で栄えた湊。

 

・金子みすゞ記念館

みすゞが幼少期を過ごした書店「金子文英堂」のあったところが記念館として整備され、みすゞの部屋も再現されています。海原に瞬く光のように澄み切った言葉の数々と、あまりにも悲しく終えたその生涯に、人間として生きることそのものを考えさせられずにはいられません。町にはみすゞの詩があふれています。清々しい言葉に彩られたまちって、いいな。

『見えぬけれどもあるんだよ。

/見えぬものでもあるんだよ。』

(「星とたんぽぽ」より)

 

・ロバの本屋

温泉でひとっ風呂浴びて集落外れの本屋さんへ。記念館で買い求めたみすゞの童謡集を読んでいると、川の方からそよいでくる柔らかな風が頬を撫で、鶯のBGM。湯上りで、パンとスープもいただいて・・・ついつい睡魔に襲われる。

 

・ぽんぽこの里

ロバの本屋店主のいのまたさんに、「おいしいコーヒー屋とかないですかね?」と尋ねると、「今なぜかこの辺でコーヒー屋さんがいっぱいできてるのよ!」と、どうもアツいことになってるよう。

いのまたさんが仲間と制作したおすすめ案内マップを見つつ、今日やっているお店ということで教えていただいたのが、なぜか直売所の「ぽんぽこの里」。一見フツーの直売所・・・いや角度変えて見ても普通の直売所。たぬきのオブジェはあるけど(ぽんぽこ焼美味しかったです・笑)

ところが敷地内になぜか、小屋風のおしゃれな靴工房と、コーヒー店「sonoda coffee」が連なっている。しかも、エチオピア・アリーシャのアイスコーヒーがほんとうに馥郁たる香り!実はお父様直売所を経営し、お姉さんの旦那さんが靴工房をやられているとのこと。ファミリアでおいしく楽しいスポット。

 

今日は風景も詩もコーヒーも、澄み切った一日。